ノウハウ

第12回 Management Cycle(マネジメントサイクル)

今日ほど学ぶことが大切な時代はない

昔は一生懸命にまじめに働きさえすれば、雇用は保障されていた。
極端ではあるが、自分の時間を提供することで会社に貢献し、雇用が保障されていたのである。
しかし今日では、もし雇用が保障されるとすれば、それは会社やオーナーに対してどんな仕事の価値を提供できるかにかかっている。
つまり仕事の時間の提供から、仕事の価値の提供に変化しているのである。
特に、店長・支配人の人達にとっては、今の時代の中で、任されたお店をどう成長させることができるかが、仕事の価値になってくる。
そのためには、常に学び、常に自分自身のスキル(能力)を磨き続けなくてはならない。ましてや時代環境が激変する中、過去の成功体験がどんどん通用しなくなってきているのである。
こんな変化の時代に学ぶことを止めるということは、自分自身の雇用が保障されなくなるということである。
時代が変化の荒波にもまれつづける今日こそ、学ぶことを第一に考え、常に新しい環境に適応するための努力をする必要がある。
厳しい時代が続いているが、厳しい時代だからこそ、自分自身のスキル(能力)を磨くことで今の時代を乗り切ってゆくのである。
誰も時代の変化から逃れることは出来ない。
そのためには、変化に対応し、そして変化に挑戦しなくてはならないのである。

基本姿勢の変化

今の時代、高いマネジメント技術と経営者としてのスタンスが備わっている店長・支配人達は、多くのお客さまの満足と共に、高い業績を上げることができている。
売上高も、利益も最終的には店長・支配人のマネジメント力と、仕事のスタンスで決定してくる。
ではまずそのマネジメントであるが、マネジメントのことを一言で表現するならば、会社の経営理念や使命を具体的に商品やサービス、そしてクレンリネスといった店舗の状態で表現し、そしてその結果としての売上高と利益を確保することである。
私が店長・支配人の店舗マネジメントの中核に、良いオペレーションと良いコストコントロールを置いているのもこのためである。
そして、次にその店舗マネジメントを行ってゆく時の仕事のスタンスも同時に問題にしている。
同じオペレーションと、コストコントロールを追及してゆく場合でも、仕事のスタンスが経営者としてのスタンスと、そうでない場合のスタンスでは結果の数値が大きく違ってくるからである。
経営者として取組んでいる店長・支配人のお店は、お客さまをより温かく迎えようというホスピタリティーあふれた集団と、そして店の主としての店長・支配人の姿が確認できる。
お店の主としての姿や経営者としてのスタンスが、お客さまの満足と、結果としてのお店に対する支持を得ることにつながり、お店が大きく育ってゆくのである。
しかし、多くの店長・支配人はまだまだこのレベルには達していない。
それは、自分の時間を提供することで、今でも雇用が保障されると思っているからである。しかし雇用が完全に保障されなくなってきている以上は、この時間の提供という考えを改め、価値の提供をするための基本姿勢を身に付けなくてはならない。この経営者としての基本姿勢を身に付けることが、これからの仕事の成果を大きく変えることにつながるのである。

不断の改善

経営者のスタンスと言うと難しいように考えてしまうが、要するに、お店の主として、自らの力で問題点を発見し、そして自らの力でその問題点を解決してゆくということである。
お店の歴史とは、改善と進化の歴史でなくてはならない。
その改善の進化があなたのお店を繁盛店、そして大繁盛店へと導くのである。
このことを「不断の改善」と言う。つまり、絶え間なくつづくお店での改善活動のことである。
そこでこの不断の改善を進めるに当たっての基本的なマネジメントプロセスがあるのでここで紹介するとしよう。
これは一般的に言われるところの経営管理活動のサイクル(Plan-do-see)を、私なりにさらにブレークダウンし、月間の仕事とリンクさせたものである。
私はこのマネジメントプロセスを、「マネジメントサイクルの7Steps」と呼んでいる。

Management Cycle(マネジメントサイクル)

マネジメントサイクルとは、まさしくお店の問題を解決しながら、自分のお店をより良くしてゆくための不断の改善サイクルである。
サイクルというからにはグルグルと回るわけで、それが仕事の回転になってくるのである。
つまり、お店の問題を発見し、そしてその問題を解決し、また新たな問題に挑戦するということを一ヶ月単位で行うということである。
この一連のマネジメントサイクルを身に付けることが、店長・支配人の人達にとっては、これからの自分自身の成長を決定すると言っても過言ではない。
それは自分自身の一ヶ月間の仕事を振り返ってみればすぐに判るはずである。
課題を中途半端に終えてしまったり、課題が単なる掛け声で終わっているようでは、何時までたってもお店が成長することはないのである。
最も大切なことは、確実に一歩ずつ成長してこそ、繁盛店への道を歩めることを忘れてはならないのである。
では、このマネジメントサイクルについて一つひとつ説明してゆこう。

Step.1 問題の発見

私が考える仕事のスタートは問題の発見である。
よく言われる「仕事への問題意識を持とう!」と言うことであるが、しかし、仕事への問題意識を持ち、お店の問題点を発見するには、その前にまず「仕事の理想」や「仕事のこだわり」といったものがなくてはならない。
これがあって、はじめて仕事に対する問題意識を持つことができる。
私は、仕事の理想や、仕事のこだわりを、スタンダード(店舗運営の基準)で表現している。つまり、お店の状態や数値を具体的に明確にしたものである。
実はこの店舗運営基準(スタンダード)は、店長・支配人であれば必ず持っているものである。それは今の自分のお店のレベルが、自分自身のスタンダードであると言うことである。
当然であるが、自分自身のスタンダードが低ければ、仕事に対する問題意識は低く、お店の改善レベルも低いということになり、逆に、自分自身のスタンダードが高ければ、お店への問題意識は高くなり、お店の改善レベルも高いものになるということである。
この自分自身のスタンダードレベルが、不断の改善レベルを決定し、あなたのお店の成長を決定するのである。
そのためには、まず自分自身の持つ店舗運営基準(スタンダード)を高めることで、仕事の問題意識を高め、そして不断の改善レベルを高めることでレベルの高い店舗運営をしなくてはならないのである。

Step2.原因の分析

さて、店舗運営基準(スタンダード)に基づいて、自店舗の問題点を発見したら、次に行うことは、その問題が何故起きるのかの原因を突き止めることである。当然であるが問題には必ず原因がある。だからその原因を探らなくては、その問題は解決することはないのである。
しかし、この原因分析を徹底的に行う店長・支配人が実に少ない。
お店の問題点がいつまで経っても解決しないのはこのためである。
そこで原因の分析で最も大切なことは、問題の本質を探すために、「なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?」を5回以上繰り返すことである。
この徹底した問題点の掘り下げが、原因を明確にし、そしてその問題点を解決へと導いてくれるのである。

Step3.対策の判断

問題の原因を分析したら、次に行うことはその問題が解決し、今までよりもお店が良くなるための対策案を決定することである。
つまり、問題解決のための具体的な打ち手を決めることである。
ここで注意しなくてはならないことは、問題の原因と対策の判断が論理的に結び付いていることにある。

Step4.行動の計画

次は、対策の判断を確実に実行に移すための行動計画(アクションプラン)の作成である。
この行動計画には具体的に、誰が、何を、どこで、と言ったことが書かれていなくてはならない。
この計画書に具体性がないと、対策の判断が実行に移されることは先ずない。つまり5W2Hで行動計画を作成するのである。
自分の作成した行動計画が、この5W2Hにかなっているか、今一度チェックする必要がある。
Who(誰がやるのか?)
What(何をするのか?)
Where(どこでするのか?)
When(それはいつするのか?)
Why(それはなぜするのか?)
How(どのようにしてするのか?)
How much(売上と利益はどうなるのか?)

Step5.実践の行動

どんなに立派な行動計画が出来ても、そのことを実践しなければ成果を得ることはできない。
良い成果を得るためには、当然であるが確実な実践行動が必要である。
成果の90%は、この実践行動で決まるのである。
失敗を恐れずにどんどん新たな課題にチャレンジしなくては、何も得ることはないのである。

Step6.進捗の確認

進捗の確認とは、対策の途中確認を行うことである。
言いっぱなしや、やりっぱなしにならないよう、計画段階でこの途中確認を行う日を決定しておくことが重要である。
また途中で進捗の確認をすることで、計画の修正や追加の教育といった更なる課題も明確になってくる。
この進捗の確認を行うことで、実践の行動にもさらに磨きがかかってくるのである。

Step7.結果の分析

結果を把握することが、次への成長に結び付く。
もちろん良い成果を得ることに越したことはないが、失敗も次への成長に結び付くことを忘れてはならない。
大切なことは仕事の結果を分析することで、それは何が上手くいったのか?何が上手くいかなかったのか?それはどうして上手くいったのか?はたまた何故上手くいかなかったのか?を明確にすることである。
このことを行うことで、同じ失敗を繰り返すことはなく、上手くいったことは更に磨きをかけることが出来るのである。
以上が問題解決のためのマネジメントサイクルの7Stepsである。
この、問題の発見⇒原因の分析⇒対策の判断⇒行動の計画⇒実践の行動⇒進捗の確認⇒結果の分析といったサイクルを一ヶ月の仕事に取組むのである。
つまり月はじめには、必ず問題の発見と原因の分析をし、そして対策の判断と行動の計画を立て、実践の行動を起こしてゆくのである。
そして月中には、課題の進捗の確認をし、必要であれば課題の修正や追加の課題を取り入れ、月末には結果を分析するのである。
このことを毎月繰り返しながら、不断の改善を行い、結果としてお店を強くしてゆくのである。