ノウハウ

第6回 全ては人に始まる

全ては人づくりからスタート

店は人に始まり人に終わると言われるように、全ては人づくりからスタートする。
繁盛店の共通点に、働く一人ひとりの仕事のレベルの高さがある。
店の評判は、その働く一人ひとりの仕事振りの足し算からなっている。つまり働く全員の仕事の足し算がその店の総合力と言うことである。
そうすると同じ30人の従業員数であっても、その総合力は40点もあれば、120点もあるということである。
繁盛店とは、その働く人達の力が最大限に発揮されていて、お客様の満足を得ているということである。
そのために必要になってくるのが人の育成、つまり、店舗での実地の教育訓練である。
一般的に言われるところのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)である。
良い店にするためには必ず人を育成しなくてはならないはずであるが、こんな基本的なことが行われている店が実に少ない。
一人前に仕事が出来ない人に仕事をさせているのも問題であるが、それを放置している店長にはもっと問題を感じる。
そんな店は実地での教育訓練を行う習慣が全くない。
店を訪店し続けて感じることに、良くない店での現場教育の無さがある。
それはいつ行っても人を教えている光景に出会わない事である。
その場に店長がいても、仕事が出来ない従業員に対してなにもしない。
勿論ピークタイムにはなかなか難しいが、それでもスロータイムには十分に可能である。従業員を教育することでしか店は良くならないし、店を良くすることは、よい人材を育成することでしか出来ないのである。
その「人」を育てないから店が繁盛しないのである。
だから仕事が一人前に出来ないまま働いているのである。これだと本人も大変であるが、一番迷惑するのはお客様である。
スーパー店長達の仕事は、1に人づくり、2に人づくり、そして3番目もやはり人づくりである。そうしながら店を繁盛店へと導くのである。
勿論全ての人を自分ひとりでトレーニングするわけではなく、店にトレーナーチームを配置し、全ての時間帯で確実にトレーニングできる仕組を作ってゆくのである。
それでも最初のトレーニングは自分から始めてなくてはならない。
そこで今回は、そんな人づくりの基本的なことについて考察してゆく。

トレーニングの5段階

先ずは、トレーニングの方法論について説明する。
トレーニングを難しく考えすぎるとなかなか店でのトレーニングが定着しない。
そこで、もっと簡単に考えて頂くために今回紹介するのがトレーニングの5段階手法というものである。そのトレーニング5段階手法とは、
1) 考課
2) 教育
3) 訓練
4) 評価
5) 自立の5つの教育段階である。
重点を述べると下記のようになる。

第1段階 考課(教える項目を明確にする)

・効果とは、不足する知識と経験を発見することを言う。
・それは教える項目を明確にするためである。何を教えてよいのか分からない状態で人をトレーニングすることはありえない。
・しかし、新人の場合であれば、何も知らないわけであるから、ゼロからのスタートである。この場合は、教える順序とおおよその目安になる教育時間があるとよい。
・既存のパート・アルバイトの場合は、出来ている点と、出来ていない点を明確にすることである。この出来ていない点を発見することが、トレーニングにおける考課ということになる。
このことが出来て、次の教育と訓練と評価につながる。

第2段階 教育(不足する知識を充足する)

・第2段階である教育とは、考課による不足する知識と経験を見極めた上で、知識を充足することを目的としている。
・仕事が出来ないからといってすぐに叱るようなことは絶対にしてはならない。仕事が出来ない理由には必ず2つのことがある。
それは、仕事を知らなくて出来ない場合と、もう一つは仕事のサボりである。
勿論仕事のサボリの場合は叱らなくてはいけない。
一番困るのは叱らなくてはいけない時に叱らなくて、叱らなくてもいい時に叱る場合である。
ほとんどの場合は後者が多い。
・部下が仕事を出来ないことを嘆く前に、仕事をキチント教えていないことを反省しなくてはいけない。
・そして具体的に仕事の内容を分かりやすく説明するのである。この場合も一方的なコミュニケーションならないように、十分に相手の理解の状態を確認しながら丁寧に説明しなくてはならない。相手が理解したかを確認する一番の方法は、そのことについて相手に言わせてみることである。
・教育には根気と情熱が必要なことをくれぐれも忘れてはならない。
・実際にその仕事を自分でやってみせることが一番大切である。これが相手に対する一番のモチベーションにもなってくる。
・ここまでの一連の作業を教育と言う。

第3段階 訓練(不足する経験を充足する)

・トレーニングの5段階手法の3番目は、頭で理解できたことを今度は体で覚えてもらう番である。そのためには実際に仕事をさせてみることである。
・訓練をしてゆく場合も、相手の習得状況を確認し続けなくてはならない。このことを怠るから部下が仕事を覚えないのである。
・教えたつもり、訓練したつもりになってはいけない。教育と訓練はその理解と作業の習得を確認することで最終的に教えた、訓練したことになる。
・そのためには、訓練の状況を確認しながら間違いがあればその場で正すことが必要になってくる。
・繰り返し、繰り返し訓練し、相手がのみ込んで実践できるようになるまで訓練を続けなくてはならない。
・訓練状況によっては、第2段階の教育に戻り、もう一度具体的に仕事の内容について説明しなくてはならない。
・やってみせながら、やらせてみる。これが一番大切である。

第4段階 評価(褒める)

・誰でも自分のやっていることが果たしてどのくらい成果を挙げているのかを知りたいものである。
・仕事についてなにも言ってくれない状態が一番やる気をなくす。
・次に出来ない事ばかり言われ続けることにもやる気を無くすものである。
・一番やる気が高まる状態は上手くいったことを見逃さずに褒めることである。
・仕事が出来ないのを叱ることばかりに才能を発揮する店長は沢山見てきたが、そんな店は働く人に元気と活力を感じない。
・みんながやる気を持って仕事に取組んでいる状態が、一番お客様が満足する状態であり、そして一番生産性が高い状態である。
・人は上手く出来たとき、それをキチント評価してもらえれば、満足しやる気も起こってくる。
・そのためには相手の仕事振りに関心を示し、それに答えることである。
・このことをフィードバックと言う。

第5段階 自立(相手に考えさせる)

・トレーニングの最終段階は、一人ひとりが一人前になり自立した状態で仕事が出来るようになることである。
・何時までも指示命令で動くのではなく、自分の仕事の範囲と責任を理解し、その上で、自分で仕事の判断ができる状態なることである。
・このためには相手に考えさせ、判断できるようなトレーニングが必要になってくる。これがトレーニングの最終段階になる自立である。
・ここでは、その手法としてコーチングを取り入れている。この部分については後で詳しく述べることにする。

トレーニングツールの作成

トレーニングを進める上で大切なことは確実な人材の育成にある。
よく人を教えていると言いながら、実のところその人の資質に頼っている所がほとんどである。これだと、上手くいく場合もあれば、上手くいかない場合もある。
勘と経験も重要であるが、こと人の育成に関しては、教える項目を確実にそして漏れなくトレーニングを行わないと、安定した店舗運営にはならない。
のるかそるかでは、オペレーションの大きな乱れになり、結果として売上高を落とすことになる。計画的に人材育成をしてこそ、店舗の組織化が可能となるのである。
そこで必要になってくるのがトレーニングのツールである。
トレーニングツールがあることで、教える項目が明確になると同時に、その人のトレーニング状況も確実に把握することができ、一人前になるまでの目安が確実になってくる。各種ツールには、ホール・キッチンの新人用から、スキルアップ用、そして時間帯責任者用まであると完璧である。
最初は、そんなに細かくなくても良い。覚えなくてはならない作業の項目が明確になっており、作業の習得度がチェックできる程度のものであれば十分である。
トレーニングツールが定着してきた段階で、更に内容の充実を図ることで、より高いレベルの人材育成を目指すことが大切である。
更にトレーニングツールができることで、階層毎の仕事の出来映えが明確になるはずである。つまり、全ての人の仕事振りをチェックできるツールにもなるのである。
これが考課表と言われるものである。
人の評価は、印象評価もあるが、基本は客観的な仕事振りに対する評価でなくてはならない。みんなが一つ上の仕事を目指しながら、考課と教育と訓練、そして評価と自立がお店で行われていると、確実にお店は活性化してくる。

トレーニング計画

トレーニングツールがあっても、トレーニング計画がなければ場当たり的な人材育成となんら変わりはない。
今日何を教えるのか、明日は何を教えるのかを明確にしなくてはならない。
この明確にしたものがトレーニング計画書である。
この計画書は何も特別なフォームは必要ではない。
ワークスケジュール表(稼動計画書)等に、その日のトレーニング内容が明確になっていればよい。大切なことは、計画的な人材育成が出来ていることである。
また、階層毎の目安になるトレーニング時間を設定することも重要である。
例えば、ホールの新人を採用して、一人前にするまでの目安の時間である。
キッチンも同様である。ただしキッチンの場合は全ての作業が出来る目安の時間ではなく、各セクションの作業をマスターする時間である。
この目安の時間は、実はトレーナーのトレーニング技術レベルによって決まる。
つまり、トレーニング技術のレベルが向上するに伴って、時間は短縮されると言う訳である。トレーニングは、何も特別のことではない。
トレーニングのツールや、トレーニングの計画、そしてトレーニングの時間が明確になっていれば、実はみんなが出来ることであり、みんながしなくてはならない仕事でもある。最初の導入には、かなりの労力が当然必要であるが、定着してくるとお店の機能として動いてくる。
それは、そのツールや計画で育てられた人達は、そのまま自分達がトレーナーとしてやれるようになるということである。
トレーニングを特別のように考えている人が多いが、その考え方自体が問題である。
決して簡単ではないが、自分がやっている仕事を教えることは、自分が次の仕事に挑戦できることでもあることを忘れてはならない。

自立(自分で考えさせる)

トレーニングの最終段階は、一人ひとりが一人前になり自立した状態で仕事が出来るようになることである。何時までも指示命令で動くのではなく、自分の仕事の範囲と責任を理解し、その上で、自分で仕事の判断ができる状態になることである。
このためには相手に考えさせ、判断できるようなトレーニングが必要になってくる。これがトレーニングの最終段階になる自立である。
そこで、一人ひとりを自立させるためのトレーニングコミュニケーションの手法としてコーチングを取り入れる。
このトレーニングの目的はあくまでも一人ひとりを一人前にする事である。
そのためには今までのコミュニケーションといったいどこが違うのかということを理解しなくてはならない。
自立の状態とは最終的に指示命令ゼロの状態で、一人ひとりが自分の判断で仕事が出来るようになることである。
店は働く全員の力が結集されてはじめて繁盛店へとなってゆく。そのためには、みんなが頑張らなくてはならない。
店は店長一人決まるが、店長一人では何もできない。店長はみんなの力を最大限に引き出すことで店をより強くしなくてはならない。
店は全員が主役である。
店長が指示命令を出し続けているあいだは、まだまだ全員の力を出し切っていない。

※自立型のコミュニケーション

自立のためのトレーニングコミュニケーションのコーチングの特徴は、指示命令型のコミュニケーションから、自立型のコミュニケーションに移行することで、一人ひとりが今まで以上に高い仕事振りをすることにある。
そのためには、答えを与えるのではなく、相手が自ら答えを見つけられるように、相手に問いかけるコミュニケーションスタイルになっていることが重要である。
だから「あなただったらどうするか?」と言った質問形式になってくる。
そんな考える集団こそが、繁盛する店づくりにつながるのである。
コーチングは、相手が考え、学び、そして行動することで、当人が本来持っている力や可能性を最大限に発揮できるようにサポートするためのコミュニケーションの手法であることを忘れてはならない
仕事を全く知らない新人にコーチングをしてもあまり効果的ではない。
人の成長に合わせて、コミュニケーションの取り方を変える最終段階がコーチングと言うことである。
自分が成長しているのに何時までも上司から指示命令を受けるのは嫌なことだと思う。しかし、それに慣れてしまうと、今度は指示命令がないと動けない人間になってしまう。
誰でもそうであるが、人間は本来成長し続けるものである。
トレーニングの最後に自立とそのための手法としてのコーチングを持ってきたのは、コーチングが自立の手法としては大変効果的な手法の一つであるからである。
しかし、コーチィングは万能ではないことも忘れないでもらいたい。

以上<